『建築家 安藤忠雄』を読んで。【対話をあきらめず戦い続けた男】

今回読んだ本

建築家 安藤忠雄

この本を読んだきっかけ

この本は私が初めて読んだ安藤忠雄本。ネット上の情報だけだとどうしても安藤忠雄氏の人となりを知るには限界があり、安藤氏の本が読みたいな~と思った時に見つけた。書店にはいくつか安藤本並んでいたが、自伝的な内容で彼の人生を一通り確認できそうだったので、この本を選んだ。

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安藤忠雄の闘い=「粘り強い対話」

カンタンに概要を説明すると、安藤忠雄の幼少期から2008年ごろまでの活動をまとめた自伝的一冊。祖母と暮らしていた時代、プロボクサー時代、世界を旅した頃、住吉の長屋、表参道ヒルズ etc… 代表的なエピソード&プロジェクトを一つ一つピックアップして、その当時の状況、そこにどう立ち向かっていったかが描かれている。

安藤氏の「闘う」姿勢がよく出ているのは、表参道ヒルズについてのエピソードだろう。表参道ヒルズのプロジェクトでは、多くの地権者と建築計画を巡って対立、調整をしてきた様子が描かれている。プロジェクトのはじめのころ、安藤氏の計画は多くの地権者に大反対されていた。

だが、何度も打ち合わせを重ね、建築家の想いと施主の想いをぶつけ合いながら、最終的には「安藤さんに任せるよ」というところまで信頼してもらったという話だ。

この話だけに限らず、1に調整、2に調整、3にも調整、、、時に施主と対立、時に妥協しながら一つのプロジェクトを粘り強く続くけていく姿に感銘を受けた。

安易に妥協せず、理想に向けて真剣に向き合うこと、対話をつづけること。これが本書の核心ではないか。

対話で乗り越えたプロセス

表参道ヒルズのプロジェクトで対話を重ねた安藤氏の姿がよく分かる一節を引用したい。

今振り返ってみて、あの混迷状態から、よく最終合意にまでたどり着けたものだと思う。

4年余りの話し合いの時間を経て、地権者の方々が最後には「安藤さんに任せる」と言ってくれる様になったのは、一つには、一貫して同じ主張を続けた頑固さが、逆に信頼にもつながったのだろう。そしてもう一つ、寄せられた意見に対しては、応じるか否かは別に、必ず答えるようにしたからだと私自身は思っている。

結局、プロジェクトを実現に導いたのは、人間同士の”対話”という当たり前の行為の積み重ねだった。

必ず出会うモンスタークライアント

ホームページやアプリを作る仕事をしていると、「もっとこうしたい」「なんでこうなっていないんだ」「明日までに」という達成しづらいご要望をいただく事が多い。私はモンスタークライアントと呼んでいるが、ボス級のモンスターでもよく話を聞いたり、こちらから最善案を提案すると、案外落ち着くことが多い。

要は、自分の思いを聞いてほしいだけだったり、どうせ作るなら最高のものを作りたいと思ってるだけなのである。

そんな時、私が大事にしているのは対話。いったんすべて受け止める、ということをよくやっている。前述の安藤氏のような姿勢はプロとして本当に大事だ。

プロジェクトに火消しメンバーとして入ることもあるが、結局問題のきっかけは、火事を起こした人間がきちんとお客さまと話せていなかったり、話してくれていても聞く耳を持たず受け流しているだけだったことが原因だったりする。

これはお客さまの言いなりになるということではない。「お客さまの考えはよくわかりました、ただ私はプロの視点からもっとこうするほうがいいと思います。」ということ。案件が燃え上がる時は、ヒアリングができていないか、提案のクオリティが低いかだが、意外になんとかなるのは後者の方だったりする。

建築やweb制作など、誰かの依頼を受けてものづくりをする人は、とても参考になる部分が多い一冊。ぜひ読んでもらいたい。

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