【必見】ここだけは見るべき、安藤忠雄建築の代表作15選!

9/27から国立新美術館で開催中の『安藤忠雄展 -挑戦-』に絡めて、「これは安藤忠雄の代表作だなー」と思うもの、知名度が高いものを中心に国内作品から15棟選んでみた。制作数も、受賞も多い安藤忠雄。それぞれの作品のエピソードも合わせてご紹介したい。

安藤忠雄

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1941年大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年安藤忠雄建築研究所設立。代表作に「光の教会」「ピューリッツァー美術館」「地中美術館」など。1979年「住吉の長屋」で日本建築学会賞、1993年日本芸術院賞、1995年プリツカー賞など受賞多数。イェール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。1997年から東京大学教授、現在、名誉教授。

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住吉の長屋(1976年)


出典:http://www.hetgallery.com/row-house_sumiyoshi.html

安藤忠雄の初期作品として代表的な住宅建築。大阪市住吉区に建つ三軒長屋の真ん中を切り取り、真ん中に間口2間奥行き7間(3.45m×14.25m)の打ち放しコンクリートの箱を作った。

建物の内部には屋根のない中庭が設けられ、トイレやお風呂にいくために、雨の日は傘をさす必要がある。また、打ち放しコンクリートは断熱性が低く空調も備えていないため、夏はとても暑く、冬はとても寒いという「厳しい」家だ。安藤氏と施主のこんなやり取りは有名で度々話に出る。

寒い時にどうするのとクライアントが言うので、「寒かったら一枚余分に着ろと」
じゃあもうちょっと寒かったらどうすればいいのかと「そしたらもう一枚余分に着ろと」
でもうちょと寒かったらどうするのと「そしたらもう諦めろと」

建物内部の様子

この住吉の長屋を見る時「安藤忠雄的なデザイン」として、コンクリート打ちっぱなしのミニマルで無機質なデザインに目が行きがちだ。だが、本当に注目すべきは、じつに「風流な家である」という点、その建築思想では無いだろうか。

高度経済成長期の住宅の「合理性」「経済性」に歯向かい、雨の日には雨を感じられ、風の日には風を感じられ、月の光を感じられる、そんな住吉の長屋は「あはれ」な家なのだ。この光や風、水、草木花など自然を空間内に取り込んでいく思想は、このあとの安藤忠雄建築で度々目にすることができる。

1979(昭和54)年:日本建築学会賞 受賞作品

小篠邸(1981年)


撮影:Kazunori Fujimoto

出典:http://www.hankyu-hanshin-dept.co.jp/lsnews/06/a02/00103571/?catCode=601006

出典:http://www.hankyu-hanshin-dept.co.jp/lsnews/06/a02/00103571/?catCode=601006

有名なファッションデザイナー「コシノヒロコ」の自宅兼アトリエとして、兵庫県芦屋市の傾斜地に建てられた邸宅である。2013年からは「KHギャラリー芦屋」として予約制の一般公開をしている。安藤忠雄の初期の住宅建築の中でも比較的大きい建物の部類。

壁面や天井の細長い隙間から自然光を取り込んだり、大きな一枚ガラスで外の自然空間との一体感を演出したり、90年代以降美術館や公共建築を数多く手がけていく彼らしさが見え隠れする。

六甲の集合住宅Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ(1983年,1993年,1999年,2009年)


撮影:Naoya Fujii

撮影:Naoya Fujii

撮影:Naoya Fujii

出典:建築パース.com

出典:http://blog.livedoor.jp/exotic_manifold/archives/807756.html

隣接する土地に、同じ建築家が作った着工時期の全く違う4つの集合住宅&医療施設が存在する珍しい作品群。急峻な崖地を削り、基礎を固めながら作った建物で、崖の中に埋め込まれたような印象を受ける。RC造りながらⅠ・Ⅱは阪神淡路大震災を乗り切った。

安藤が若い頃に巡ったフランス・マルセイユのル・コルビュジエ設計「ユニテ・ダビタシオン」に影響を受け、「街」あるいは「集落」をつくりたかった作品と言われている。神戸のきれいな景色を一望できるのも魅力だ。しかも、住める。

風の教会(1986年)


撮影:hiromitsu morimoto

撮影:hiromitsu morimoto

撮影:hiromitsu morimoto

撮影:hiromitsu morimoto

安藤忠雄初の教会建築で、兵庫県神戸市灘区の六甲山にある。六甲の教会とも呼ばれる。一般的には「安藤忠雄 教会三部作」と言われる教会建築群の1つ。例に漏れず鉄筋コンクリート造。

もともとは旧六甲オリエンタルホテルの附属施設として建設された結婚式場であるが、現在は同ホテルが営業停止になり、使用されることはなく中に入ることが出来ない。(2015年にアートイベントでは、内部が公開されたという情報あり)

1987(昭和62)年:毎日芸術賞 受賞

水の教会(1988年)


撮影:MIKI Yoshihito

撮影:MIKI Yoshihito

撮影:Hidetsugu Tonomura

北海道の星野リゾートトマム内にある、ホテル併設のチャペル。湖に面したガラスサッシはすべて開け放つことが可能で、全てを開放すると「水・光・緑・風」といった自然と一体になった感覚を得ることができる。

結婚式の行われていない朝昼晩の時間帯はそれぞれ建物内を見学することができる。もちろん結婚式をあげることができるのでこれから結婚式を考えている方にはオススメ。

湖は近くの小川から水を引いてきた人造湖ではあるが、安藤建築の中ではここまでしっかりと水がテーマになっているものはあまりない。

1990(平成2年):BCS賞 受賞

光の教会(1989年)


撮影:hiromitsu morimoto

撮影:hiromitsu morimoto

撮影:hiromitsu morimoto
大阪府茨木市に建築された、プロテスタント系の教会堂。「風の教会」「水の教会」と違い、日々の信仰を目的とした礼拝堂である。国立新美術館「安藤忠雄-挑戦-」で、1/1の原寸大の建物が再現。

低予算で作成されたため、「住吉の長屋」と同様に幾何学的でシンプルな構造だが、四角い箱に壁が斜めに切り込んでいる大胆なポイントが、唯一性を生み出している。壁面に十字架のように切られたスリットがあり、光が差し込む。

安藤忠雄はル・コルビュジエの「ロンシャンの礼拝堂」を見たときに、その光の美しさに感動し「光が人を集めるんだ」という強いインスピレーションを得た。その「光が人を集める」「神聖さを感じさせる」というテーマが色濃く出ている作品。当初は、安藤氏曰くこの十字架にはガラスをはめ込む予定はなかった。

私はガラスが入っていないほうがいいと思っていました。
で、中に光が入ってくると同時に風も同時に入ってきて、お互いに助け合いながら生きなければならないということを実感するべきではないかと言う私と、寒いのに何考えてんのというクライアント、信者側のはなしとがうまく行かなかったんですけれども。

今回の展覧会での1/1光の教会は、これらのガラスを取った形で、より安藤氏の理想に近い形で設置されるとのこと。

ベネッセハウスミュージアム(1992年)


出典:ベネッセアートサイト直島

撮影:Todd Lappin

撮影:Todd Lappin

撮影:Forgemind ArchiMedia

香川県の小さな離島、直島に建設された現代アート収蔵を目的とした美術館。福武書店(現:ベネッセホールディングス)の社長福武總一郎が、「世界中のこどもが集まる文化の島を作りたい」と発想したことをきっかけに、安藤忠雄に声をかけプロジェクトスタート。

リチャード・ロング、ブルース・ナウマン、アンディ・ウォーホル、大竹伸朗など名だたるアーティストの作品が常設で展示されている。

もともとは採石や周囲の銅製錬所、産廃などにより非常に荒れ果てた人口数千人の何もない島であったが、植樹を続け、現在では世界中から人が集まるアートの島として復活を遂げた。それら一連のプロジェクトの最も核となる建物である。

本福寺水御堂(1992年)


撮影:Forgemind ArchiMedia

撮影:Forgemind ArchiMedia

撮影:Shoko Muraguchi

蓮池の下にお堂があるという例を見ない建築物。建物へのアプローチは一面に敷かれた玉砂利とコンクリートの壁しか見えないが、一歩一歩踏みしめる度に玉砂利の音が響き、静謐さと神聖さを感じさせる。アプローチを経て階段をのぼると、「蓮池」の中に入っていくように建物内部へ階段が続いていく。

当初この設計には檀家さんや住職の根強い反対があったそうだが、別の高僧にこの案を提案したところ、仏教での蓮の「尊さ」や「神聖さ」からむしろ肯定する意見をもらい、現在のような形で実現するに至った。

大阪府立近つ飛鳥博物館(1995年)


撮影:kuobo

撮影:Forgemind ArchiMedia

撮影:Forgemind ArchiMedia

この建物は、古墳文化の公開、展示、研究を目的としたセンターとなる博物館である。この博物館の構想はこれまでの博物館とは異なっており、単なる出土品を展示するだけの施設ではない。ここでは、新しい試みとして、環境として周辺に点在する古墳群全体をそのまま見せようとしている。そのため建物は、そこから出土地域全体を一望できるようなひとつの丘として考えられた。

建物内部に入ると暗がりが拡がる。出土品は古墳の中に収められているときと同様な姿で展示され、人びとは古墳内部に入っていくのと同様な感覚を体験できる。それは古代の黄泉の国への旅である。

この建物は日本人が自分たちの歴史に向かい合うべき場として、また、自然を喜び讃える日本人の感性を収めた平成の古墳として建てられる。

安藤忠雄

1994年:日本芸術大賞 朝日賞

淡路夢舞台(2000年)


撮影:Forgemind ArchiMedia

撮影:EMO

撮影:EMO

撮影:Forgemind ArchiMedia

撮影:EMO

淡路島の海を望む高台につくられた複合リゾート施設。国際会議場、ウエスティンホテル淡路、百段苑など様々な施設全体を安藤忠雄が設計した。

もともとこの敷地は関西国際空港の埋め立てに使うための土砂を採取場として使われていた。開発によって荒れ果てた土地をもう一度自然豊かな人が集まる場所にしようということで、プロジェクトが行われた。

くしくも阪神淡路大震災の5年後に開業した施設で、その設計や工事にも復興の意味が込められていた。

国立国会図書館 国際子ども図書館(2002年)



撮影:japanese_craft_construction

撮影:japanese_craft_construction

撮影:japanese_craft_construction

上野にある国立子ども図書館については、古いものを残しながら上から一枚のガラスを被せまして。
古いものをパッケージしようと、考えます。日本の独特の漆喰の技術があって出来上がるんですが。

1906年に帝国図書館として開館された、明治ルネサンス期様式の建物を再利用した建築。戦前は国立図書館として、戦後はその分館として役目を持っていた。2015年には、安藤忠雄建築研究所設計により新館が建設された。

地中美術館(2004年)


撮影:Forgemind ArchiMedia

撮影:Kentaro Ohno

撮影:Forgemind ArchiMedia

撮影:EFFIE YANG

撮影:EFFIE YANG

香川県直島にて、ウォルター・デ・マリア、ジェームス・タレル、クロード・モネの3アーティストを常設展示するためだけに作られた美術館。建物のほとんどが地中に埋まっている。一部の屋根が外部から光を取り入れる作りになっており、作品のほとんどは自然光のもとで展示されている。

建物は作品を効果的に見せるために最大限の工夫がされており(特に光)、モネの『睡蓮』、ウォルター・デ・マリアの『Time/Timeless/No Time』、ジェームス・タレルの『オープンスカイ』など、その日の天候や時間帯によって作品の見せる顔がちがう。

表参道ヒルズ(2006年)


Toshihiro Gamo CHEN

撮影:ume-y

撮影:ume-y

撮影:mako10

安藤忠雄設計の商業ビルとして最も代表的な作品となった、東京都青山に建設されたショッピングビル。旧同潤会アパートの跡地に建てられており、建物の端には同潤会アパートのレプリカがギャラリーとして新たに建築。

建物の特徴は通りに沿って続く300メートル以上のガラスのファサード、建物を地下に深く作ることで周囲の景観を壊さない配慮をしている点、建物の中心の大きな吹き抜け等があげられる。

商業ビルとしては、売り場面積を最大化したり、空調の維持費を抑える等経済的な合理性を施主や地権者にはかなり求められたが、粘り強い交渉で現在のような形に落ち着いたとのこと。

21_21 DESIGN SIGHT(2006年)


撮影:Capone~

撮影:Moody Man

撮影:Yen-Chi Chen

撮影:Moody Man

東京・六本木に建築された「一枚の布」をイメージした、大きな鉄板屋根が特徴的な企画展専用の美術館。展示室の殆どは地中に埋め込まれる形になっている。

ミュージアムショップエリアの細長いガラス窓のスリットや、三角形のガラス窓が特徴的な中庭、周囲の光が閉ざされて複雑に折れ曲がった回廊など、光や闇を感じることができる建築。

ファッションデザイナーのイッセイ・ミヤケと共同で建築されたプロジェクトで、企画展や運営の多くに彼らが関わっている。

国立新美術館が今年で10周年をむかえるのと同時に、21_21 DESIGN SIGHTも10周年を迎えている。『安藤忠雄展-挑戦-』と時期を同じくして、10/7~10/28の間にギャラリー3にて『安藤忠雄 21_21の現場 悪戦苦闘』が開催予定。

真駒内滝野霊園 頭大仏殿(2017年)


出典:真駒内滝野霊園

出典:真駒内滝野霊園

出典:真駒内滝野霊園

出典:真駒内滝野霊園

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