「戦後日本の家」をまとめて見られる「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」展にいってみた感想

今回足を運んだのは東京国立近代美術館で開催中の「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」展。この展覧会は、2016年から、ローマ、ロンドンを巡回し、この秋東京で開催中。もともと欧米圏向けに作られている展覧会なので、日本の建築についてあまり詳しくない方でも楽しんで観覧することができる。

著名な建築家の代表作が、どのような時代背景で生まれたのか、当時どういう思想を持って設計されたのかが詳しく解説されている。一つ一つの建物をを「かっこいい」「機能的」「美しい」と思うことはあっても、他の建築家と比べてみる、時代やテーマの流れの中でその建物を解釈する、という展覧会はなかなか無いのではないだろうか。

国立新美術館で開催中の『安藤忠雄展-挑戦-』に行く前に、ちょっと足を運んでみるとさらに安藤忠雄建築を分かりやすく見られると思う。個人的にはそれがオススメ。

今回行った展覧会:日本の家 1945年以降の建築と暮らし
2017/7/19 – 10/29
国立近代美術館
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/the-japanese-house/

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『プチプチガーデン』など、子どもも楽しめるワークショップ満載

今回の展覧会ではたくさんのこどもが楽しめるイベントが開催中だ。


プチプチや、規格化されたパネルを使って家を作ったり、工作をしたり。建物の中庭には来場者が作った小屋でお店が開かれたりと、見るだけじゃなく参加できる展覧会になっている、

世界よ、これが日本の家だ。

欧米の多くの国では、建築家の仕事の中心は公共建築なのですが、日本の場合は、一人の建築家が、公共建築も個人住宅も手がけることが相当数あります。建築界で最も栄誉ある賞といわれるプリツカー賞の日本人受賞者が、多数の住宅建築を手がけているというのは、実は結構驚くべきポイントなのです。

安い映画のコピーみたいですが、この展覧会では日本の代表的な建築家56組、計400点に及ぶ模型やスケッチ・写真などが展示。

日本の建築家をざっと総ざらいできる。特に「家」に焦点を当てた展覧会は多くないので、模型を眺めるだけでもなかなかおもしろい。

黒川紀章『中銀カプセルタワー』の建設風景がおもしろい

Embed from Getty Images

photo:osmatsuda

この中銀カプセルタワーが作られる過程が動画で紹介されていて、コレがとてもおもしろかった。若き日の黒川さんマジイケメン。

中銀カプセルタワーが作られたのは1972年で、場所は東京・銀座のど真ん中(東京都中央区銀座8-16-10)

このカプセルタワーは世界で初めてのカプセル型住居で、人口や都市が成長しある程度年代が経ったら部屋のユニットを交換し、常に新陳代謝していくような集合住宅が目指された。(これをメタボリズムという)

いかにも1970年台の「レトロな未来感」とでも言うのだろうか。スタンリー・キューブリックの映画の世界に出てきそうな、レトロだけどとても洗練されている、そんなデザインの家。当時は高度経済成長の真っ只中で、工場で家を作ってそれを現地で組み合わせる工法がドンドン主流になっていった時代。そういう時代背景も踏まえてとても興味深い。実はこの建物現存していて、まだ住人もいる。が、各ユニットが交換されることは一度もなく、老朽化が進んでいる。

丹下健三の自宅、かっこいい


By Dijk, Hans van / Anefo

東京都庁や広島の平和記念資料館、代々木体育館を作った人。この人の自宅は1階が吹き抜けになっていて、平和記念資料館のような、正倉院のような空中に浮いている家でした。自宅で行われた結婚式の様子など、興味深かった。こんな家で育って、お父さん丹下健三ですとか、こどもはどんな気分なのだろう。

『無印良品の家』の原点

皆さんは無印良品で家が買えるのはご存知だろうか?「木の家」というシリーズがある。2015年にグッドデザイン賞を受賞している。

その原点となったのが、難波和彦の「箱の家」シリーズだ。都市住宅の京商空間を最低限の物質で、もっとも効率よく使うために考えられた住宅建築である。会場にはこのシリーズの模型や解説もある。



出典:難波和彦・界工作舎

「箱」を場所化するには、物質を可能な限り少なく、かつ効率的に使う必要がある。「箱の家シリーズ」はそのような試みとしてスタートした。初期の「箱の家」では、都市住宅としての最低限の性能を最小限の物質によって達成することを目指した。それは必然的にデザインの「標準化」をもたらした。シリーズを展開するにつれて、性能は徐々にレベルアップし、それに並行して構築技術も洗練され「多様化」していった。

出典:http://www.kai-workshop.com/boxhouse/boxhouse01.html

こちらの難波和彦氏のホームページに、手がけた箱の家が複数紹介されているので、詳しく見てみたい方はこちらを参照して欲しい。
http://www.kai-workshop.com/boxhouse/search/boxhouse03.cgi

もちろん『住吉の長屋』も


出典:http://www.hetgallery.com/row-house_sumiyoshi.html

andotadao.comでは何度か登場している安藤忠雄『住吉の長屋』も展示。住宅建築から始まった安藤忠雄についてももちろん紹介されている。今回の展覧会では「伝統的な町家文化」と「都市化とともに進んだ住宅の標準化」の中で生まれた建築として紹介されていた。

狭い空間の中に、そこに根付いてきた生活文化を表現したり、あるいはコンクリートといった20世紀的などこでも手に入る素材であったり、外からは隔絶されているが内部に大きな余白や自然とつながる中庭があったりと、それらを表現する『住吉の長屋』はどこまでも都市的な建物だなと感じた。

最後に

建築展というとどうしても堅苦しいイベントのモノが多いが、子供向けのワークショップやプレイスペースもあるので、家族でも楽しめる展覧会。動画や写真、模型がたくさん展示されており、会場も広いのでゆったり回れる。

設計図が読めたらもっと面白いんだろうなぁ、、、というのが私と妻の感想でした。みなさん知り合いに図面が読める方がいたら一緒に連れて行くべきです!

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